フリードリヒがそっと唇に人さし指を当てると、会場のざわめきはまるで細波が引いていくように、スーッと消えていった。
遠くを見つめ、いくつかの言葉をつぶやく。勝つのは自分だ、飛び越えられない訳がない…。
そして、彼女は笑った。とびきり優しい笑顔で。
つぶらな瞳に、光が宿る。
一歩二歩、助走を始める。動き始めてしまったら、もう後がない。
ブラシッチは越えた。チチェロワは3回失敗して越えられなかった。
2回挑戦して越えられなかった2m04、3回目をパスして挑む2m06。
十数歩の助走から、勢い良く飛び立つフリードリヒ。
地上から僅か200cm。そこに天国と地獄の境界線がある…。
無情にもバーは落ちた。越えられなかった。
マットの上から起き上がったフリードリヒは、それでも、笑顔だった。
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という訳で、女子走り高跳び。優勝はクロアチアのブラシッチ。2m04をただ一人越える事のできた女神です。世界陸上2冠の美人ジャンパーは、歓喜のダンスを披露していました。
でも、俺がすごく印象に残っているのは、3位となったドイツのフリードリヒ。
他のジャンパーが応援の拍手を求めるのとは対照的に、彼女は静寂を求めるのです。
その仕草が、またカッコいい。ゾクッとしました。
会場が静かになったのを確認すると、満足げに指を唇から下ろします。
そしてひと言ふた言、ブツブツと喋ります。多分自分に何か言い聞かせているのでしょう。
ここからが、自分が一番驚き、そして彼女の魅力にやられそうになった瞬間!
笑うんです。
フッという感じの微笑みの時もあれば、歯を見せてニコッと笑う事も。
力や緊張をほぐすために、笑顔を作るというアスリートの方は結構いらっしゃるのですが、このフリードリヒの笑顔は、なんつーか、カメラの向こうの誰かに微笑みかけているような…。
本気で笑顔を見せている感じなんです。ドキッとしますよ。
男子200mの後の惰性で見ていたのですが、思わず釘付けになってしまいました。
いやぁ、おかげで眠るタイミングを完全に逃してしまった…(^^;)
今日は一日、使い物にならなさそうな俺です。























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